鬱で済ませるな!?【「おやすみプンプン」はなぜ刺さる】大ファンによるゆるいレビュー(あらすじ、ネタバレあり)

漫画レビュー

「おやすみプンプンは今世紀最大の鬱漫画」とかよく言われていますが、そんな言葉で済ましてほしくない!というか決して済ませられないだろ!

どうも、おやすみプンプン大ファンのまるです。

私が中学生だか高校生だかの頃に、ブックオフで出会った漫画「おやすみプンプン」。

真っ黄色だったり、真っピンクだったりの単色で斬新な表紙が目を引いたことがきっかけです。

多分、ちゃんと読んで好きになったのは高校生の頃。

それから何年経っても、何度も読み返しています。

おやすみプンプンは青年期の自分の人格・価値観形成においてかなり大きな影響を与えてくれたと思っています。

今回はそんなおやすみプンプンについて、語ってみたいと思います。(ガチな考察を書いている方には到底敵わないので、素人目線のゆるい感想だと思っていただければ)


おやすみプンプン(1) (ヤングサンデーコミックス)

あらすじ

まずは簡単なあらすじをご紹介します。

主人公のプンプンは小学五年生。少し複雑な家庭環境の、でもどこにでもいるフツウの少年です。

そんなプンプンのクラスに愛子ちゃん(田中愛子)が転校してきて、一目惚れするところから物語は始まります。

小学五年生のプンプンの夢は宇宙の学者になって、人類を他の惑星に移住させて地球滅亡から救うこと。

この漫画は、そんな小学生らしい夢を見て可能性に満ち溢れていた子供プンプンが、大人になるまでの半生を追った成長物語です。

小学生のプンプンは愛子ちゃんのことを運命の人だと確信していましたが、愛子ちゃんとの「鹿児島に行く」という約束を破ってしまったことがきっかけで疎遠になり、、、。それでもなかなか愛子ちゃんのことが忘れられず、、、。

この愛子ちゃんがまた癖の強い女の子で。

シングルマザーの家庭で育ちますが、この母が宗教にハマっていてかなりヤバい母親で。それゆえ愛子ちゃんは愛情不足でいわゆる「メンヘラ」に育ちます。けど愛子ちゃん、そんな簡単なメンヘラではない!!

さあ、そんな愛子ちゃんとプンプンも恋の行方も見ものです!

個人的に推したいおやすみプンプンの見どころ

主人公は、あなた

と、いうのは少々言い過ぎですが、、、。

この漫画が多くの人に刺さりまくる理由、それは紛れもなく読者が主人公プンプンへ自己投影しやすいように作り込まれていることにあります。

プンプンが鳥モチーフのキャラクターとして描かれている。

プンプンへ読者が自分を重ねやすい理由として、まずプンプンが鳥モチーフのキャラクターとして描かれていることがあります。

プンプンが人ではなくトリの形で描かれていることで、読者はプンプンの姿を自由に想像できるわけです。

さらに言えば、表情も最低限の情報しかないので、読者の解釈の余地がかなりある。読んでいると割と意識しないと気づかないレベルでプンプンの感情がダイレクトに伝わってくるのですが、実は読者に表情を想像させている部分が大きいです。 普通絵を見て読者が受動的に主人公の感情を読み取りますが、おやすみプンプン能動的に感情を読み取ることになるので、その分主人公を身近に感じることができます。

キャラクターが完全に人の容姿だったら、読者はそのキャラクターを第三者として見る他ないけど、主人公をできる限り簡易的に書いて読者に解釈の余地を与えることで、読者の中で読者なりの主人公が作られ、親近感が沸き、作品に入り込めるようになっていると感じました。

共感を呼ぶネガティブな感情

次に、共感を呼ぶネガティブな感情。

プンプンは子供の頃から陰気な少年として描かれていて、成長するにつれさらにその陰気さというか、ひねくれ様は加速して行くわけですが….。

この漫画、元々ネクラな人は言わずもがなプンプンの陰気さに共感して刺さると思うのですが、そうではない人でも共感を呼ぶのではないかと思っています。

結局ネガティブな側面って、人には見せないようにしているだけで、誰しもが持っているじゃないですか。僕/私って周りからは明るい人に見られているだろうけど、本当は、、、とか(笑)

で、人って自分はポジティブでいる時は何も考えないくせにネガティブな感情を持っている時ばっかり自覚してものすごく気にしますよね。

だから、プンプンが一人で陰気でいる度に、読者は共感しどんどん同情して行くんじゃないかと思いました。

個性豊かで魅力に溢れるキャラクターたち

プンプンを取り巻く登場人物たちが個性豊か!

南条幸

まず、重要人物となるのが南条幸

彼女は田中愛子に次ぐ第二のヒロインですが、「運命」と信じる田中愛子に対し、南条幸は現実重視の女性として対照的に描かれます。

プンプンに想いを寄せ、、というか執着し、その理由も、単にダメンズを放っておけない性格なのと、苦しみながら必死にもがくプンプンを見ていることで自分も生きていけるとかなんだか。

だから南条幸がプンプンの彼女であったにも関わらず、プンプンが自分との約束をほっぽって愛子ちゃんと逃避行に行っても許すし、けどプンプンが死ぬことは許さない。

ちなみにこの南条幸は漫画家で、おやすみプンプンも南条幸が書いたものだというオチになっています。

清水&関

続いて私が好きなのが、清水くんと関くんペア。

この二人のエピソードについても軽く語らせてください。

この二人は、幼稚園からずーっと仲良し。

清水くんはいつも鼻水を垂らしていてぼーっとしていて頼りなくて自分にはうんこ神が見えると主張する妄想癖激しめの男の子で、しっかり者の関くんはそんな清水くんにきつくあたりながらも優しい。

関くんは清水くんのことをいつも気にかけていて、二人で生きていこうっていう意思が見えるのですが、その理由が物語終盤で明らかになります。(以下エピソード)

幼稚園の頃仕事が忙しかった関くんの両親に代わり、幼稚園のお迎えをしてくれていたのが清水くんのお母さんでした。そして清水くんのお母さんは、清水くんと関くんを連れて幼稚園から帰る途中にトラック事故に巻き込まれ、亡くなったのでした。

清水くんのお母さんがトラックに轢かれた時、関くんはとっさに清水くんの目を覆い、「お前のお母さんは生きている」と嘘をつきます。

物語の最初から、清水くんのお母さんは手とセリフのみしか描かれていませんでしたが、それらは関くんの嘘を信じた清水くんの妄想でした。

清水くんのお母さんを自分が奪ってしまったような罪悪感を感じ、それからはずっと自分が代わりに清水くんを守って行こうとする関くん。

関くんが清水くんに対してよく言っていた「お前が俺を信じるなら 俺がお前を絶対に守ってやるから」というセリフはこの事件がきっかけでした。

高校を卒業してもお母さんがいると信じて未だに現実逃避を続けている清水くんに対して、関くんは怒りだすし、さらには清水くんが愛子ちゃんのお母さんと同じ宗教にハマって、清水くんもきつい態度の関くんに対して「関くんは僕のことを信じてくれないんだ」と不満が募って距離ができてしまった、と思われたのですが。

清水くんがハマった宗教が集団自殺を起こしたとき、ちょうどその建物が火事になり

関くんはとっさに清水が危ない!!と駆けつけます。が、関くんは火にトラウマがあり、火が大の苦手

だったのに!!!清水のために必死に火事の建物に乗り込みます。

せ、関くん、、、涙涙( ; ; )

倒れている清水くんを見つけて、「ほら見ろ、俺は自分の意思でなんだってできるんだ。」

かっこ良すぎるこのセリフ!!

関くんって、家庭環境とか社会的弱者であることを考えるとどうグレても全くおかしくないのに、絶対に自分を失わず、道を外れないんですよね。登場人物の中で、一番しっかりしてるかもしれない。

清水くんを背負って「清水、帰るぞ」と、火事の建物から救い出すと同時に、宗教からも救い出す。

その後病院を退院した清水くんはまさかの記憶喪失になっていて、迎えにきた関くんに対して「誰?」発言(O_O)

「誰って…」と関くんは少しショックを受けますが、すぐに、「…俺は、お前の友達だよ」と。

何も今までと変わりません。

関くんは義理深くて誠実で、清水くんに対する思いには胸が打たれます。

田中愛子の自殺

おやすみプンプン、ラストの13巻はかなり衝撃的。

まず、愛子ちゃんの自殺。

母から逃げようとして母を殺してしまい、その際自分も腹に傷を負った愛子ちゃんはプンプンと逃避行を続けている間に精神的にもどんどん追いやられていって。

ちなみにこの逃避行ではプンプンと小学生の頃に行く約束をしていた鹿児島に来ています。

愛子ちゃんは中学生時代、「好きな人と頭のてっぺんから爪先まで、完全にわかり合いたい。その夢がかなったらその瞬間に死んでも良い。」という発言がありましたが、ゆ、有言実行しやがって!!!!

13巻で自殺する直前に、「小学生の時工場の帰りにみた流星群にプンプンと両思いになるお願いをした。ちゃんと叶ったんだ。こんな幸せなことってあるかな?」という完全なる自殺の前振りがありました。

愛子ちゃんはやっとのやっと幸せになったから死んだ。幸せの絶頂で死ぬことが愛子ちゃんの夢だったんですよね。愛子ちゃん的には完璧な終わり方でハッピーエンドなわけで。

私は愛子ちゃんが死んだ時めちゃくちゃ動揺しました(笑)

自殺の直前まで、自殺の方法を調べるプンプンに「死んじゃダメなんだよ」って言ったり、これからはどんな風に暮らしたいとか理想を語ったり、プンプンに対して全く自殺願望を見せていなかったところとかがリアルでもうトリハダ。

どちらかというとプンプンの方が自殺願望が高そうだったのに、愛子ちゃんはフッと、本当に儚く逝ってしまいました。

愛子ちゃんの首吊り遺体を発見したプンプンは、愛子ちゃんが書いた七夕の短冊が落ちているのを見つけました。

そこにはあなたがずっと私を忘れませんように。」とありました。

( ; ; )( ; ; )( ; ; )

ここでまた刺さるのが、プンプンが愛子ちゃんの死を受けて泣いたりが一切ないんですよね。ただ静かに愛子ちゃんの死を受け入れる。

さらには首から上が黒塗りだから、表情もクソもない。強いていうなら、無?の漆黒プンプンが今まで通り落ち着いた口調のモノローグで愛子ちゃんに語りかけ、愛子ちゃんの死体を運ぶ様子が淡々と描かれます。

プンプンにとってたった一人の運命の人が亡くなったその時の時間の流れが本当に静かで、ゆったりしていて。田舎の風景も相まって穏やかだけど着々とプンプンの人生も終わりに向かっている感。と、いうかもう終わっているのか。

プンプンは愛子ちゃんの亡骸とお別れした後、東京に戻り、子供の頃のあの流星群を見た廃工場で自分も死のうと思いました。

タイトルであるおやすみプンプンの「おやすみ」とは自分の人生に「おやすみ」する、つまり「死ぬ」ということでした。

そして悟り

本来愛子ちゃんに潰されるはずだった片目を潰して、自殺しようとしたその瞬間、南条幸子があらわれます。

「起きなよ」

結局プンプンは死ぬこともできませんでした。

ここで漆黒プンプンは幕を閉じます。

次に目を覚ましたプンプンは病院にいて、警察に事情聴取を受けます。

その後のプンプンは嵐の後の静けさのように、穏やかな人生に軌道修正していきます。

愛子ちゃんが亡くなって何度目かの七夕。プンプンは愛子ちゃん母の殺害に関与した事による執行猶予期間を終えて、不動産管理の仕事についていました。

ちゃんと自分が前に進んでいることを実感しているプンプン。モノローグで愛子ちゃんに向かって自分の近況を報告していきます。

一人で幽霊みたいな生き方だけどそれが自分にとっては楽で、何も悩まず身軽でいれば、風が吹くだけで自然と前に進むんだと。すごく月並みだけど、それはそれで幸せなんだ。

「この頃、君の声が少し遠いんだ」

愛子ちゃんが死ぬ直前、プンプンは愛子ちゃんと七夕の日はお互いを思い出す約束をしたのに、プンプンはだんだん愛子ちゃんのことを忘れている自分に気づきます。

あんなにも世界の中心だった愛子ちゃんが思いのほか簡単に遠ざかっていく。

「愛子ちゃん。ごめんね。僕は嘘つきだよ。」

「きっと、今年も来年も天の川は見れなくて。この先ずっと七夕は永遠に曇り空で、…でも世界は終わらないし人類は滅亡しないから。僕は先に進まなきゃならないんだ…」

愛子ちゃんと逃避行をして、小学生の頃果たせなかった約束を果たし、それでも自分で死ぬこともできなかったプンプンが初めて自分の運命を受け入れて「人生を悟った感」。

私の語彙力ではうまく言えないけど、それまで人生クソだ!!僕には愛子ちゃんが世界の全て!と思っていたプンプンが愛子ちゃんを失い、「それでも案外普通に人生は続いていく」「それでも生きていかなきゃいけない」。ついにここにたどり着いたのかあと(誰様)。

ほんとーーーーにこの漫画はすごいなと思いました。

ハルミンとの再会

最後の最後で、小学生の同級生であるハルミンに視点が移り、ハルミンとプンプンが再会します。

ハルミンの目に映るプンプンは、南条幸ら多くの仲間に囲まれて、至ってフツーで、幸せに見えていました。

プンプンの一人称視点ではこんなにも山あり谷ありで数奇な人生だったのに、第三者目線で見た時にはこんなにも穏やかなのか。

みんな外からは見えないだけでいろんなことを抱えていて、自分も他人から見たらごくごく平凡のど真ん中なんだろうな。

再会したプンプンもハルミンはお互いが知っている小学生の頃とは成長してまた違っているから、二人の会話は取り止めのないもので、いまいち続かなくて、、

お互いがお互いの名前を忘れていて、けど顔を見た瞬間に分かるほどお互いのことはしっかり覚えていて、またねって別れる時、プンプンの目には涙が。

実際、子供の頃の友達とずっと一緒にいるなんてことはそうそうなくて、みんなそれぞれ大人になって違う道を行く。

そして相手の名前を忘れてしまっても、その友達と遊んだ思い出というかその時の感情って、なかなか忘れられないんですよね。

大人になったハルミンは小学校の教師になっていました。

ハルミンのクラスに転校生の女の子がやってきます。

教室にはその女の子に一目惚れする少年がいました。かつて愛子ちゃんに一目惚れしたかつてのプンプンのように。

プンプンの数奇に見えた人生はありきたりでもあって、プンプンと愛子ちゃんみたいな出会いは今も世界のどこかで起きていて、、、これで「おやすみプンプン」は終わります。

鬱マンガ?最後まで読んだ感想

最初におやすみプンプンを鬱漫画とかそんな言葉で済ましてほしくない!と書きましたが、正直最後まで読むとかなりガツンときます。だからメンタルが弱っている時に読むのはおすすすめしません笑

プンプンの人生だけでなく登場人物一人一人の人生のストーリーに深みを持たせて書いてあってすごい。

愛子ちゃんのお母さんを殺害してからの極限状態での逃避行は本当に引き込まれるし、人一人の半生を実際に体験したかのようで疲れがドッと来る。

確かに鬱になるから鬱マンガなんだろうけど、けどただ暗いだけじゃなくて、白く未来がひらけたような、悟ったような終わり方が「それでも人は生きていくんだ」って前を向かせてくれる。

個人的にはハッピーエンドって好きじゃないけど、プンプンの終わり方にはすごく納得だしあの終わり方がとても好きです。

まとめ

ここまでで私が語ったのは、まさに氷山の一角で、物語の1割も語れていない気がします。というか本当はもっと書きたいことがあるくらい魅力を書ききれていないけど、疲れてもうムリです,,,笑

おやすみプンプン、内容が濃すぎてとても要約できないし、深すぎて説明しきれないのが正直な感想です。

今回は私がおやすみプンプンで好きな部分をピックアップして書きましたが、他にも心に刺さるエピソードが盛り沢山です。

まだ時間がある時に随時、書き足せていきたいです。

少しでも気になった方は、是非とも一度読んでみて欲しい作品です。


おやすみプンプン(1) (ヤングサンデーコミックス)
まる
まる

最後までお読みいただきありがとうございました。

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